行政書士の事件簿の書き方|記入例つきで法定要件をクリアする実務マニュアル【2026年版】
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行政書士の事件簿の書き方|記入例つきで法定要件をクリアする実務マニュアル【2026年版】

著者・監修: 依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)
2026年6月15日21分で読める

この記事の結論

事件簿の書き方は「いつ書くか(受任時・完了時の2段階)」と「何をどう書くか(5項目それぞれの粒度)」を所内ルール化することで、記載漏れと書き方のブレが解消します。とくに事件名の業務種別と報酬額の税込表示は、後で行政書士会の調査が入った際に説明可能な粒度で残しておくのが安全です。

「事件簿の項目は分かっているけれど、実際にどの粒度で書けば法的に大丈夫なのか不安」「先輩の書き方が事務所ごとにバラバラで参考にしにくい」――。開業直後の方やスタッフを採用したばかりの事務所で、事件簿の書き方に迷うのはよくある状況です。

本記事では、行政書士法第9条が定める5つの必須記載項目について、項目ごとに「NG例」「OK例」を示しながら実務マニュアル形式で解説します。クラウド型業務管理ソフトでの自動記載との対比も含め、紙・エクセル・クラウドどの様式でも応用できる書き方を整理します。

行政書士の事件簿の書き方マニュアル
行政書士の事件簿の書き方マニュアル

事件簿の基本的な書き方

事件簿は受任した業務1件につき1行(または1ページ)で記録します。様式の選び方と記入のタイミングの2点をまず押さえます。

用意する様式(紙・エクセル・クラウド)

事件簿の様式は次の3パターンが代表的です。

様式入手先向く規模
紙台帳行政書士会配布様式・市販帳簿個人事務所・案件数月10件以下
エクセル自作・行政書士会の電子様式・無料テンプレ個人〜2名事務所
クラウド業務管理ソフト行政書士向けSaaS全規模・特に2名以上

紙でもエクセルでもクラウドでも、行政書士法第9条が定める5項目を漏れなく記載できれば法的要件は満たせます。様式選定の詳細は行政書士の事件簿テンプレート|エクセル様式と運用のコツを参照してください。

記入のタイミング(受任時・完了時の2段階)

事件簿への記入は、受任時と完了時の2段階に分けると漏れが減ります。

  • 受任時 — 事件の名称・受任日・依頼者の住所氏名・想定報酬額を記入
  • 完了時 — 完了日・実際に受領した報酬額・備考(成果物・引渡日等)を確定

完了時に一括記入する運用だと、長期化案件で受任日が曖昧になったり、月をまたいだ案件の管理が混乱したりします。受任した時点で先に行を作っておくのが実務的です。

この2段階記入をクラウドで自動化したい場合は、14日間の無料トライアルで実際の入力フローを試すと、自所の運用に合うか具体的に確認できます。

各項目の書き方(実例つき)

事件簿の各項目の書き方OK/NG例
事件簿の各項目の書き方OK/NG例

行政書士法第9条第1項が定める5項目について、項目ごとの書き方を実例で示します。

出典: e-Gov法令検索 行政書士法(昭和26年法律第4号)

事件名(業務種別の書き分け)

事件名は、業務種別と内容が第三者にも分かる程度の具体性が必要です。

種別NG例OK例
建設業許可許可申請建設業許可申請(新規・東京都知事許可・一般・とび土工工事業)
相続関連相続書類遺産分割協議書作成(被相続人○○氏・相続人3名)
在留資格ビザ申請在留資格認定証明書交付申請(技術・人文知識・国際業務)
産廃許可産廃産業廃棄物収集運搬業許可申請(新規・東京都知事許可)

迷いやすいのは、同じ依頼者から複数の業務を受任した場合の書き方です。原則として 業務1件=1行 が基本ですが、密接に関連する付随業務(例: 建設業許可と経審)はまとめて1行にし備考で内訳を残す運用でも問題ありません。所内ルールを統一しておくことが重要です。

受任日・完了日

受任日は「依頼を承諾した日」、完了日は「業務完遂日」を記録します。

状況書き方の例
通常案件受任 2026-04-15/完了 2026-06-30
受任と完了が同日受任・完了 2026-05-20
長期化案件受任 2026-01-10/完了 2026-09-30(途中段階は備考に記録)
取下げ・中止受任 2026-03-05/中止 2026-04-12(理由を備考に)

完了日の基準を「行政庁の許可日」「成果物引渡日」「請求書発行日」のいずれにするかは事務所ごとに揺れがちです。一般的には依頼者への成果物引渡日を採用するケースが多く、これを所内基準として明文化しておくと迷いが減ります。

報酬の額(着手金・残金の分割表記)

報酬額は、税込・税抜・実費の区別を明示します。実費(収入印紙・登録免許税等)は報酬額に含めず、別記が原則です。

パターンNG例OK例
通常20万円200,000円(税込220,000円)/実費別
分割受領20万円着手金100,000円(税込110,000円・2026-04-15受領)+ 残金100,000円(税込110,000円・2026-06-30受領)
報酬と実費を混同250,000円報酬200,000円(税込220,000円)+ 実費30,000円(登録免許税)

着手金と残金を別々に受領した場合、合計額を1行で書く方法と、金額・受領日ごとに2行で書く方法があります。後者のほうが税務申告との突合が容易です。クラウド型業務管理ソフトの多くは入金単位で行を追加できる設計になっています。

依頼者情報

依頼者の正確な住所と氏名(法人の場合は商号・本店所在地)を記載します。

依頼者種別記入例
個人東京都新宿区西新宿1-1-1 山田太郎
法人東京都千代田区丸の内1-1-1 株式会社○○商事(代表取締役 鈴木一郎)
共同受任主たる依頼者を記載+備考に共同依頼者を列挙
代理人を介した受任最終的な依頼者を主、代理人は備考

法人依頼で複数の担当者がいる場合、事件簿上の「依頼者」はあくまで法人。担当者個人名は備考や別カラムで管理します。住所変更があった場合は、受任時点の住所と変更後の住所の両方を残しておくと連絡可否の判断材料になります。

都道府県別の追加記載項目

都道府県施行細則による追加項目
都道府県施行細則による追加項目

行政書士法第9条第1項の末尾「その他都道府県知事の定める事項」は、各都道府県の行政書士法施行細則で具体化されています。所属する行政書士会によって追加項目が異なるため、自分の管轄を必ず確認します。

代表的な追加項目の例:

  • 受託番号 — 事務所内で1件ごとに採番する管理番号(東京都など複数都道府県で要求)
  • 事件の処理結果 — 許可・不許可・取下げ等の最終結果
  • 領収書番号 — 報酬受領時の領収書ナンバーと事件簿の紐付け

確認方法は、所属する行政書士会の会員ポータルまたは事務局への問合せが確実です。配布されている事件簿様式に既に欄が用意されている場合は、その欄を埋めれば追加要件を満たせます。

よくある記載漏れ・NG例

事件簿のNG例と修正後のOK例
事件簿のNG例と修正後のOK例

行政書士会の調査・指導で指摘されやすい記載漏れ・NG例を整理します。

パターン何が問題か改善ポイント
事件名が「許可申請」だけ業務種別が特定できない業務種別+内容を具体化(建設業・新規・一般等)
報酬額が「相談料」と混在法定の「業務」と相談料の区別が不明確相談料は別帳簿または備考で区別
完了日空欄のまま放置進行中か放置案件か不明月末に未完了案件を棚卸する運用ルール
受任日が完了日より後単純な記入ミス受任時点での先行記入で防止
依頼者が「○○様」のみ住所・氏名が漏れている受任時にチェックリストで確認

記載漏れに気づいた場合の対処

過去案件で記載漏れを発見した場合は、気づいた時点で遡って正しく記入し、備考に「2026-MM-DD 追記」と記録します。隠す・放置するほうが行政書士会の調査時にリスクが高くなります。

クラウド型ソフトでの自動記載

クラウド型ソフトでの自動記載のイメージ
クラウド型ソフトでの自動記載のイメージ

紙やエクセルでの手書き・手入力には限界があります。クラウド型業務管理ソフトを使うと、次のような自動化が可能です。

自動化される項目仕組み
受任日案件作成日が自動セット
依頼者住所氏名顧客マスタから自動転記
事件名業務種別テンプレートから選択+カスタム
報酬額・税込入力金額から税込・税抜を自動計算
完了日案件ステータスを完了に変更した日付を自動記録

これにより、同じ情報を何度も入力する二重入力が解消され、転記ミスもゼロになります。月末や年度末に行政書士会向けの事件簿を出力する際も、ボタン一つで様式に整形できる製品が増えています。

こうした自動記載・帳票出力をはじめ、行政書士HUBでできること(機能一覧)を確認すると、自所の事件簿運用にどこまで対応できるかを把握できます。

事件簿の運用を楽にしたい方へ

行政書士HUBは、顧客情報を一度登録するだけで事件簿欄に自動転記。受任から完了・請求まで1つの画面で完結できます。

まとめ

事件簿の書き方まとめ
事件簿の書き方まとめ

行政書士の事件簿の書き方は、項目ごとの粒度を所内ルール化することで安定します。

  • 様式は紙・エクセル・クラウドのいずれでも法的要件は満たせる
  • 記入は受任時・完了時の2段階で実施するのが漏れ防止に有効
  • 事件名は業務種別と内容が第三者に分かる粒度で記載
  • 報酬額は税込表示と実費別記が原則
  • 都道府県施行細則の追加項目を必ず確認
  • クラウド型ソフトで自動記載すれば二重入力と転記ミスが解消

書き方のルールを所内で文書化し、新人スタッフや繁忙期にも一定品質で記載できる体制を整えることが、行政書士会の調査対応と日常業務効率の両方を支えます。


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よくある質問

Q1. 事件簿はエクセルで書いてもいいですか。

A. はい、構いません。行政書士法第9条は記録媒体を限定しておらず、紙・エクセル・クラウドのいずれでも法的要件は満たせます。ただしエクセルは同時編集や検索性に弱いため、案件数が増えてきたらクラウド型への移行を検討するのが現実的です。

Q2. 受任日と完了日が同日の場合はどう書きますか。

A. 「受任・完了 2026-MM-DD」と1日で記載して問題ありません。即日完了する相談業務や簡易な書類作成では実際によくあるパターンで、無理に異なる日付を入れる必要はありません。

Q3. 着手金と残金を別々に受領した場合は何行で書きますか。

A. 合計額を1行で書く方法と、入金単位で2行に分ける方法のどちらでも法的要件は満たせます。税務申告との突合や入金管理の容易さを考えると、入金単位で行を分ける運用のほうが実務的です。クラウド型ソフトの多くはこの分割表記をデフォルトで採用しています。

Q4. 法人依頼で複数の担当者がいる場合、誰の氏名を記載しますか。

A. 事件簿の「依頼者」はあくまで法人(商号・本店所在地)を記載します。担当者個人名は備考または別カラムで管理してください。担当者は異動しますが、依頼者は契約主体である法人で固定するのが原則です。

Q5. 過去案件の記入漏れに気づいたら遡って書いていいですか。

A. はい、気づいた時点で遡って正しく記入し、備考に「○年○月○日 追記」と記録してください。隠したり放置したりするほうが、後の行政書士会調査時にリスクが大きくなります。誤りに気づいたら早く正しく修正するのが安全です。


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※本記事は2026年6月時点の一般的な情報提供を目的としています。個別事案の判断・最新の法令解釈・施行細則の詳細については、所属する都道府県行政書士会または法令の原典をご確認ください。

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