【2026年版】行政書士の相続・遺言業務の進め方|受任から書類作成まで
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【2026年版】行政書士の相続・遺言業務の進め方|受任から書類作成まで

2026年7月7日24分で読める

この記事の結論

行政書士は、遺産分割協議書・相続関係説明図の作成、戸籍や住民票の収集、預貯金や自動車の名義変更書類の作成を担えます。一方で、不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人どうしの争いがある事案の代理交渉は弁護士の業務であり、行政書士は扱えません。受任から書類完成までは「相続人の確定(戸籍収集)→相続財産の調査→遺産分割協議書の作成」という順で進めるのが基本です。複数案件を同時に抱えるときは、戸籍の取り寄せ待ちや相続人の押印待ちといった「待ち時間」を案件ごとに可視化し、抜け漏れを防ぐ進捗管理が要になります。

「相続業務に取り組みたいが、どこまでが行政書士の仕事で、どこから他士業に引き継ぐべきか分からない」――開業まもない行政書士の先生から、よく聞く悩みです。相続は依頼者の人生に深く関わる業務であり、業際(業務の線引き)を誤ると依頼者にも自分にも大きなリスクが生じます。

この記事では、行政書士が相続・遺言業務でできること・できないこと を整理したうえで、受任から戸籍収集、遺産分割協議書の作成までの実務の流れを解説します。さらに、複数の相続案件を抜け漏れなく回すための進捗・期限管理の考え方まで、行政書士HUBの運用知見を交えて紹介します。

行政書士が担える相続業務の範囲と他士業の線引き

相続業務で最初に押さえるべきは「業際」です。行政書士は、官公署に提出する書類や権利義務・事実証明に関する書類の作成を担えますが、登記・税務・紛争代理は他士業の独占業務です。受任の段階で線引きを誤ると、依頼者に不利益が及ぶだけでなく、自身も法令違反のリスクを負います。

行政書士が担えるのは、相続人の調査(戸籍・住民票の収集)、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成、預貯金の解約や自動車の名義変更に関する書類作成などです。また、法定相続情報一覧図の保管・交付の申出を代理することもできます。

手続き担当する士業行政書士の可否
遺産分割協議書・相続関係説明図の作成行政書士○ 担える
戸籍・住民票の収集、預貯金・自動車の名義変更書類行政書士○ 担える
法定相続情報一覧図の申出の代理行政書士○ 担える
不動産の相続登記司法書士× 不可
相続税の申告税理士× 不可
相続人間に争いがある事案の代理交渉弁護士× 不可

出典: 日本行政書士会連合会 業務案内

実務では、登記が必要なら司法書士、税申告が必要なら税理士へと連携するのが通常です。たとえば不動産を含む相続では、行政書士が遺産分割協議書まで整え、相続登記は提携する司法書士に引き継ぐ、という分担が現実的です。この「窓口は行政書士、専門部分は各士業」という座組みを依頼者に最初に説明できると、信頼につながります。

行政書士・司法書士・税理士・弁護士の相続業務の線引きを示した図
行政書士・司法書士・税理士・弁護士の相続業務の線引きを示した図

相続業務の流れ(受任→戸籍収集→相続関係説明図→遺産分割協議書)

相続業務は、決まった順番で進めると迷いません。前の工程が終わらないと次に進めない「直列」の作業が多いため、全体像を最初に把握しておくことが重要です。受任から書類完成までは、大きく4ステップで整理できます。

  1. 受任とヒアリング :依頼者から被相続人・相続人の概要、遺言の有無、相続財産の種類を聞き取り、見積りと委任契約を交わします。
  2. 相続人の確定(戸籍収集) :被相続人の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の現在戸籍を集め、誰が相続人かを確定します。
  3. 相続財産の調査 :預貯金・不動産・自動車・有価証券などを洗い出し、財産目録を作成します。
  4. 書類作成 :相続関係説明図を作り、相続人全員の合意を反映した遺産分割協議書を作成して押印・印鑑証明を集めます。

このうち最も時間が読みにくいのが戸籍収集です。本籍地が複数の市区町村にまたがる場合、郵送請求のやり取りで数週間かかることも珍しくありません。受任時に「戸籍がそろうまで2〜4週間ほどかかる見込みです」と伝えておくと、依頼者との認識のズれを防げます。

相続関係説明図は、収集した戸籍をもとに相続人の関係を一覧化した図です。遺産分割協議書とあわせて金融機関や法務局へ提示するため、戸籍の記載と矛盾のない正確さが求められます。案件ごとの進め方は、行政書士の事件簿の書き方ガイド も参考にしながら、着手から完了までの記録を残しておくと品質が安定します。

相続業務の4ステップ(受任・戸籍収集・財産調査・書類作成)の流れ図
相続業務の4ステップ(受任・戸籍収集・財産調査・書類作成)の流れ図

必要書類と戸籍収集の実務

相続手続きで必要になる書類は、案件によって大きく変わります。共通して必要になる基本書類を、定義とともに早見表で整理します。何を、誰の分まで集めるのかを最初に確定させることが、手戻りを防ぐ近道です。

書類内容(定義)主な取得先
被相続人の戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍本籍地の市区町村
相続人全員の現在戸籍相続人が生存し相続資格をもつことの証明各相続人の本籍地
被相続人の住民票の除票最後の住所を証明する書類最後の住所地の市区町村
相続人全員の印鑑証明書遺産分割協議書への実印押印を証する書類各相続人の住所地

戸籍収集の難所は「出生から死亡まで連続させる」点です。転籍や婚姻のたびに戸籍が新しく作られるため、1つの戸籍では足りず、改製原戸籍や除籍をさかのぼって取り寄せます。たとえば、転籍を3回している被相続人なら、収集すべき戸籍が5通以上になることもあります。

2024年3月以降は、戸籍の広域交付制度により、最寄りの市区町村の窓口で他の本籍地の戸籍をまとめて請求できるようになりました(請求できる人や対象に条件があります)。これにより、本人や相続人が窓口で収集する負担は軽くなっています。最新の取り扱いは必ず公的情報で確認してください。

出典: 法務省 戸籍法の一部を改正する法律について

集めた戸籍は、有効期限や提出先(金融機関・法務局など)ごとに必要部数が異なるため、原本還付の要否もあわせて管理します。書類の種類が多く期限管理が複雑になりやすいので、案件ごとのチェックリスト化が有効です。顧客情報や進捗の整理には、行政書士向け顧客管理ソフトの選び方 も参考にしてください。

相続に必要な戸籍・住民票・印鑑証明書の収集フローを示した図
相続に必要な戸籍・住民票・印鑑証明書の収集フローを示した図

遺言書作成サポートの実務

遺言業務は、相続が「発生する前」に関わる予防的な業務です。行政書士は、依頼者の意向を聞き取り、法的に有効な遺言となるよう文案を整える起案サポートを担えます。遺言の方式や財産の特定、相続人への配慮を整理し、依頼者が安心して残せる形にするのが役割です。

実務でよく扱うのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の2つです。それぞれ特徴が異なるため、依頼者の事情に合わせて提案します。

方式特徴行政書士の関与
自筆証書遺言本人が全文(財産目録を除く)を自書。手軽だが要件不備のリスクがある文案の検討・記載要件の確認をサポート
公正証書遺言公証人が関与し原本を公証役場が保管。証人2名が必要文案作成・証人手配・公証役場との調整を支援

公正証書遺言では証人2名が必要で、行政書士が証人を手配・同席するケースもあります。たとえば、推定相続人が遠方に複数いる依頼者には、後の紛争を避けるために公正証書遺言を勧める、といった提案が考えられます。

ここでも業際に注意が必要です。遺言の内容をめぐって相続人間に争いが生じている、あるいは生じる見込みが高い事案で代理人として交渉することは、弁護士の業務にあたります。遺言執行や紛争性のある事案は、弁護士と連携する前提で受任範囲を明確にしておきましょう。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いと行政書士の関与範囲を示した図
自筆証書遺言と公正証書遺言の違いと行政書士の関与範囲を示した図

複数の相続案件を抜け漏れなく進める進捗・期限管理

相続業務が軌道に乗ると、複数案件を並行して抱えることになります。相続は「戸籍の取り寄せ待ち」「相続人の押印待ち」「金融機関の回答待ち」といった外部要因の待ち時間が多く、各案件がどの工程で止まっているかを把握しづらいのが特徴です。ここで管理が甘いと、戸籍の請求漏れや相続人への連絡漏れが起こります。

行政書士HUBの設計・運用に基づく自社調べの目安では、相続1案件の標準チェックリストは「受任・戸籍収集・財産調査・協議書作成・各種名義変更」の5フェーズで合計およそ20〜30項目になります。また、戸籍収集を含む受任から書類完成までの標準工数は、相続人が少なく財産がシンプルな案件で実働15〜25時間程度が目安です。案件の難度に応じてこの目安から増減します。

管理項目目安管理のポイント
標準チェックリスト項目数約20〜30項目(5フェーズ)フェーズごとに完了条件を明確化
受任〜書類完成の標準工数実働15〜25時間(シンプルな案件)戸籍収集の待ち時間は工数と別に管理
並行管理しやすい案件数1人あたり5〜10件各案件の「次の一手」を常に可視化

これらは行政書士HUBの設計・運用に基づく自社調べの目安であり、事務所の体制や案件の難度によって変わります。重要なのは、案件ごとに「いま誰の作業待ちか」「次にやるべきことは何か」を一目で分かる状態にしておくことです。

紙やエクセルでも管理はできますが、案件数が増えると更新が追いつかなくなります。行政書士HUBは、顧客・案件・許認可期限・請求までをクラウドで一元管理でき、許認可の種別を問わず期限を登録すると自動リマインドで更新や対応の見落としを防ぎます。 相続のように工程が長く待ち時間の多い業務こそ、進捗を一覧化できる仕組みが効きます。期限の取りこぼしが心配な方は、行政書士の期限管理ツール もあわせてご覧ください。

複数の相続案件をフェーズ別に一覧管理する進捗ボードのイメージ図
複数の相続案件をフェーズ別に一覧管理する進捗ボードのイメージ図

まとめ

行政書士の相続・遺言業務の要点を整理します。

  • 行政書士は遺産分割協議書・相続関係説明図の作成、戸籍収集、預貯金・自動車の名義変更書類を担える。
  • 不動産の相続登記は司法書士、相続税申告は税理士、争いのある代理交渉は弁護士の業務で、行政書士は扱えない。
  • 業務は「受任→戸籍収集→相続関係説明図→遺産分割協議書」の順で直列に進める。戸籍収集は時間が読みにくいため受任時に見込みを伝える。
  • 複数案件は「いま誰の作業待ちか」を可視化し、チェックリストと期限管理で抜け漏れを防ぐ。

相続は依頼者の信頼が直接成果につながる業務です。業際を守りつつ、進捗管理の仕組みを整えることで、安定して案件を回せるようになります。


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よくある質問

Q1. 行政書士は相続のどこまでできますか?

A. 戸籍・住民票の収集、相続関係説明図や遺産分割協議書の作成、預貯金や自動車の名義変更書類の作成、法定相続情報一覧図の申出代理まで担えます。一方で、不動産の相続登記、相続税の申告、相続人間に争いがある事案の代理交渉はできません。これらはそれぞれ司法書士・税理士・弁護士の業務です。

Q2. 相続登記も行政書士に頼めますか?

A. 不動産の相続登記は司法書士の独占業務のため、行政書士は行えません。実務では行政書士が遺産分割協議書まで整え、登記は提携する司法書士へ引き継ぐ連携が一般的です。窓口を一本化したい依頼者には、最初にこの分担を説明しておくと安心されます。

Q3. 遺産分割協議書の作成費用の目安はどれくらいですか?

A. 費用は事務所ごとに自由に設定されており、相続人の人数や財産の種類、戸籍収集の範囲によって変わります。一律の相場を断定することはできないため、相続人数・財産内容・戸籍収集の有無を確認したうえで個別に見積もるのが適切です。受任時に作業範囲と料金の内訳を明示しておくとトラブルを防げます。

Q4. 相続放棄は行政書士に頼めますか?

A. 相続放棄は家庭裁判所への申述手続きであり、書類の作成代理は司法書士、相続人の代理人として手続きを行うのは弁護士の業務です。行政書士は申述そのものの代理は行えません。相続放棄を検討している場合は、早い段階で司法書士・弁護士と連携する前提で対応します。

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