
【2026年版】介護事業所の指定申請 受任実務ガイド|人員・設備・運営基準と業際の線引き
この記事の結論
介護事業所の指定申請を受任する行政書士は、サービス種別で異なる指定権者(都道府県・指定都市・中核市/市町村)を最初に見極め、人員・設備・運営の3基準と社労士との業際を押さえて案件を回すのが実務の基本です。受任前に法人格・定款の事業目的・有資格者の確保を確認し、人員配置図と平面図で基準適合を可視化します。助成金や労働社会保険手続は社労士の独占業務であり、切り分けが受任の前提になります。
介護事業所の指定申請は、書類の種類が多く、しかもサービス種別ごとに窓口も基準も異なります。「一度受けたが、どこに何を出すのかで混乱した」という行政書士の声は少なくありません。事業者本人の開業ノウハウではなく、受任側が押さえるべき判断ポイントに絞って整理する必要があります。
本記事では、指定権者の見極め方、行政書士が受任できる範囲と社労士との業際、人員・設備・運営の3基準の確認手順、受任前チェックリスト、そして相談から指定までの標準スケジュールと工数までを、受任実務の流れに沿って解説します。行政書士の取り扱い業務全体の中での位置づけを踏まえ、介護分野を安定した受任領域にするための土台をつくります。
介護事業所の指定とは|サービス種別で異なる指定権者を最初に見極める
介護保険サービスを提供して介護報酬を受け取るには、事業者としての「指定」を受ける必要があります。この指定は一度取れば終わりではなく、6年ごとの更新が求められ、更新を怠ると介護報酬の請求ができなくなります(出典: 名古屋市 介護・障害情報提供システム「指定の更新について」)。受任時点で更新期限まで意識しておくことが、その後の顧問化にもつながります。
受任で最初につまずきやすいのが、申請先の見極めです。居宅サービスや施設サービスは都道府県・指定都市・中核市が指定権者となり、地域密着型サービスや居宅介護支援は市町村が指定権者となります(出典: 沖縄県 指定権者一覧(PDF))。障害福祉サービスの場合は、原則として都道府県知事が指定権者で、政令指定都市・中核市では市長が窓口となります(出典: 沖縄県「障害者総合支援法に基づく指定更新・指定変更」)。

同じ「介護」でも窓口が県と市に分かれるため、受任時に種別を確定させないと、様式も添付書類も的外れになりかねません。まずサービス種別を特定し、そこから指定権者と手引きを固定する。この順番を徹底することが、案件を空回りさせない第一歩です。
行政書士が受任できる範囲と社労士との業際
介護・障害福祉分野の申請支援を受任するうえで、避けて通れないのが業際の整理です。結論として、助成金の申請代行や労働社会保険の手続は社会保険労務士の独占業務であり、行政書士がこれを請け負うことはできません。人員基準に絡んで雇用や社会保険の話が出てきても、この領域は社労士に引き継ぐのが原則です。
一方で申請書類の作成については、法令ごとに整理が必要です。障害者総合支援法に基づく指定申請は、社労士法別表第一に列挙されておらず、行政書士の明確な業務領域とされています(出典: e-Gov 障害者総合支援法)。介護保険法に基づく申請書作成については、同じく別表第一に列挙されていないことから行政書士が広く受任している実務がある一方、解釈が分かれる部分もあるため、断定的に「すべて問題なく受任できる」と説明するのは避け、個別の内容に応じて慎重に判断するのが安全です。

以下は、受任前の業際チェックに使う自社整理の早見表です(本記事の整理であり、最終判断は各案件の内容と最新の法令解釈で確認してください)。
| サービス・手続 | 指定権者の区分 | 行政書士の受任 | 業際の注意点 |
|---|---|---|---|
| 障害福祉サービスの指定申請 | 都道府県/指定都市・中核市 | 明確な業務領域 | 別表第一に非該当 |
| 介護保険サービスの指定申請 | 都道府県・指定都市・中核市/市町村 | 広く受任される実務 | 解釈が分かれる余地・断定回避 |
| 助成金の申請代行 | ― | 受任不可 | 社労士の独占業務 |
| 労働社会保険手続 | ― | 受任不可 | 社労士の独占業務 |
| 法人設立登記 | ― | 受任不可 | 司法書士へ |
| 税務申告 | ― | 受任不可 | 税理士へ |
登記は司法書士、税務は税理士へ線引きすることも忘れてはいけません。介護事業の立ち上げは複数士業が関わる案件になりやすいため、自分の受任範囲を明確に説明できることが、顧客の信頼にも直結します。
人員・設備・運営の3基準を確認する
指定を受けるための実体的な要件は、人員基準・設備基準・運営基準の3つに整理されます。これらは厚生労働省令で定められており、サービス種別ごとに詳細が異なります(出典: 厚生労働省令第171号)。受任側は、この3基準を「書類でどう証明するか」に落とし込むのが仕事になります。
人員基準の確認では、管理者や有資格者の配置、勤務形態を一覧表で可視化します。障害福祉分野ではサービス管理責任者の実務経験・研修修了要件と配置基準が問われ、たとえば生活介護や就労系サービスでは利用者60対1、共同生活援助(グループホーム)では30対1といった配置が定められています(出典: 厚生労働省「サービス管理責任者等研修制度について」)。実務経験証明書の取り寄せには時間がかかるため、受任直後に着手するのが定石です。

設備基準は、事務室・相談室・トイレ・消防設備などの要件を平面図で示して証明します。運営基準は、運営規程・重要事項説明書・各種マニュアルの整備で対応します。行政書士の付加価値は、これらの書類を種別ごとの手引きに沿って過不足なく整える点にあり、顧客ごとの情報を顧客管理ソフトで一元管理しておくと、複数案件を並行して回すときの取り違えを防げます。なお介護・障害福祉はYMYL領域であり、細部の適合は所轄の指定権者と最新の手引きで必ず確認してください。
受任前チェックリスト|着手前に確認する4つの前提
受任してから前提が崩れると、スケジュールが大きく後ろにずれます。以下の4点は、正式受任の前に確認しておきたい項目です。いずれも自社整理のチェックリストで、実際の運用は各指定権者の手引きに合わせてください。
- 法人格の有無|介護・障害福祉の指定は原則として法人であることが前提。未設立なら設立から逆算する(設立登記は司法書士へ)
- 定款の事業目的|提供するサービスに対応する目的が記載されているか。不足していれば目的変更が先行する
- 有資格者の確保|管理者・サービス管理責任者・生活支援員など、種別ごとに求められる人員が確保・確約されているか
- 設備要件|物件が消防・建築の観点で用途に適合するか。改修が必要なら工期を見込む

このチェックを最初に済ませておくと、「有資格者が採用できず申請が止まった」「定款変更を見落としていた」といった手戻りを防げます。前提条件のヒアリングを定型化しておくことが、受任精度を上げる最大のポイントです。行政書士業務全体の効率化の考え方とあわせて、初回相談のフォーマットを整えておくとよいでしょう。
標準スケジュールと工数|相談から指定まで約2〜3か月
介護・障害福祉の指定申請は、相談から指定まで一定の期間を要します。多くの指定権者で、申請書の受付は指定日の前々月末や前月上旬など締切が設定されており、そこから逆算して準備を進める必要があります。自社整理の目安として、標準的なスケジュールと工数を以下に示します(あくまで本記事の整理であり、実際の締切と所要は各指定権者の手引きで確認してください)。
| フェーズ | 主な作業 | 標準工数の目安(自社整理) |
|---|---|---|
| 相談・前提確認 | 種別特定・チェックリスト確認・見積 | 1〜2週間 |
| 書類収集・作成 | 人員配置図・平面図・運営規程・各証明 | 3〜5週間 |
| 事前相談・補正 | 指定権者との事前協議・指摘対応 | 2〜3週間 |
| 申請・審査 | 正式申請・審査対応 | 3〜4週間 |
全体では、相談開始から指定まで概ね2〜3か月を見込むのが実務的です。必要書類は人員・設備・運営・法人関係・添付書類など複数の区分にまたがり、区分ごとに担当を分けて進捗を管理すると漏れが減ります。案件が重なる時期は、許認可の期限管理と同じ発想で締切を一覧化し、締切の近い案件から着手する運用が効果的です。
指定後の実務への導線|変更届・加算届・6年更新で顧問化する
指定は取得して終わりではなく、その後の継続的な手続が発生します。ここを押さえておくと、単発の申請支援を顧問契約へと発展させやすくなります。
まず変更届です。事業所名称や管理者、勤務体制などに変更があった場合、変更日から10日以内に届け出る必要があります(出典: 大阪府「変更届について」)。期限が短いため、顧客側で変更が生じたら即座に連絡が来る関係をつくっておくことが重要です。
次に加算届(体制届)です。訪問・通所系などでは、算定を開始する月の前月15日までに届け出るのが基本で、15日以前に受理されれば翌月、16日以降だと翌々月からの適用となる運用が一般的です(出典: 兵庫県「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書の提出について」)。加算は事業所の収益に直結するため、タイミングを外さない支援が喜ばれます。

そして6年ごとの更新です。障害福祉サービスの指定も6年ごとの更新が必要で(出典: 大阪市「指定更新申請」)、介護・障害いずれも更新を管理する仕組みが欠かせません。これらの期限を人力の記憶に頼ると必ず抜けが出るため、許認可の期限リマインドツールのような仕組みで自動的に通知される状態をつくり、顧問契約の中で継続支援を提供するのが、介護分野を安定収益にする王道です。
まとめ
- 介護・障害福祉の指定申請は、サービス種別で指定権者(都道府県・指定都市・中核市/市町村)が分かれるため、受任時に種別と窓口を最初に固定する。
- 助成金・労働社会保険は社労士の独占業務、登記は司法書士、税務は税理士に線引きし、介護保険法の申請書作成は断定を避けて慎重に判断する。
- 人員・設備・運営の3基準は、勤務形態一覧表・平面図・運営規程で「書類による証明」に落とし込む。
- 受任前に法人格・定款の事業目的・有資格者・設備要件の4点を確認し、手戻りを防ぐ。
- 相談から指定まで概ね2〜3か月。指定後は変更届10日以内・加算届・6年更新を仕組みで管理し、顧問化につなげる。
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よくある質問
Q1. 介護事業所の指定は何年ごとに更新が必要ですか。
A. 介護保険の事業者指定は6年ごとの更新が必要です。更新を怠ると介護報酬の請求ができなくなるため、期限管理が欠かせません(出典: 名古屋市 介護・障害情報提供システム「指定の更新について」)。障害福祉サービスの指定も同様に6年ごとの更新が求められます(出典: 大阪市「指定更新申請」)。
Q2. 事業所の内容に変更があった場合、いつまでに届け出ますか。
A. 変更届は原則として変更日から10日以内に提出します(出典: 大阪府「変更届について」)。期限が短いため、顧客から変更の連絡がすぐ届く関係と、届出漏れを防ぐ管理の仕組みを用意しておくと安心です。
Q3. 行政書士は社労士の業務まで受けられますか。
A. 助成金の申請代行や労働社会保険の手続は社会保険労務士の独占業務であり、行政書士が請け負うことはできません。障害者総合支援法に基づく指定申請は行政書士の明確な業務領域ですが、介護保険法に基づく申請書作成は解釈が分かれる部分もあるため、個別内容に応じて慎重に判断し、社労士独占領域とは切り分けて対応します。
Q4. 障害福祉サービスの指定権者はどこですか。
A. 障害福祉サービスの指定権者は原則として都道府県知事で、政令指定都市・中核市では市長が窓口となります(出典: 沖縄県「障害者総合支援法に基づく指定更新・指定変更」)。同じ都道府県内でも市によって窓口が変わるため、受任時に必ず確認してください。
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